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数学I4

図形と計量

三角比 sin・cos・tan、正弦定理・余弦定理、図形の面積への応用を学びます。

三角比の定義

直角三角形は、1つの鋭角の大きさを決めると形が決まります(相似になる)。つまり、角度が同じなら辺の長さの「比」はいつも同じです。この比に名前をつけたものが三角比です。角度から辺の比が分かる、というのが三角比の最大のご利益で、直接測れない高さや距離を計算で求められるようになります。

三角比の定義(直角三角形)

C=90\angle C = 90^\circ の直角三角形 ABCABC で、A=θ\angle A = \theta とする。斜辺 AB=cAB = cθ\theta の対辺 BC=aBC = a、隣辺 CA=bCA = b とすると

sinθ=ac\sin\theta = \dfrac{a}{c}(対辺/斜辺)、 cosθ=bc\cos\theta = \dfrac{b}{c}(隣辺/斜辺)、 tanθ=ab\tan\theta = \dfrac{a}{b}(対辺/隣辺)

「どの辺をどの辺で割るか」は、筆記体の s・c・t の書き順で覚えるのが定番です。

3030^\circ4545^\circ6060^\circ の三角比は、三角定規の2種類の直角三角形(辺の比 1:2:31 : 2 : \sqrt{3}1:1:21 : 1 : \sqrt{2})から求められます。テストでは瞬時に出せるように、必ず覚えましょう。

特別な角の三角比

sin30=12\sin 30^\circ = \dfrac{1}{2}sin45=22\sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2}sin60=32\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}

cos30=32\cos 30^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}cos45=22\cos 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2}cos60=12\cos 60^\circ = \dfrac{1}{2}

tan30=13\tan 30^\circ = \dfrac{1}{\sqrt{3}}tan45=1\tan 45^\circ = 1tan60=3\tan 60^\circ = \sqrt{3}

例題 1(測量への応用)

木の根もとから水平に 3030 m 離れた地点から木の先端を見上げると、仰角(水平方向から見上げた角)が 3030^\circ であった。木の高さを求めよ。

解き方

木の高さを hh m とすると、水平距離 3030 m と高さ hh が直角三角形の2辺になります。仰角 3030^\circ に対して、hh は対辺、3030 m は隣辺なので tan\tan の出番です。

tan30=h30\tan 30^\circ = \frac{h}{30}

よって

h=30tan30=30×13=303=103h = 30 \tan 30^\circ = 30 \times \frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{30}{\sqrt{3}} = 10\sqrt{3}

木の高さは 10310\sqrt{3} m(約 17.317.3 m)です。このように、角度と1辺の長さから、直接測れない長さを求めるのが三角比の代表的な使い方です。

三角比の拡張(0°から180°まで)

三角形の内角には 9090^\circ より大きい角(鈍角)もあるので、三角比を 00^\circ から 180180^\circ まで使えるように定義を拡張します。座標平面で、原点 OO を中心とする半径 rr の半円を考え、xx 軸の正の向きから角 θ\theta だけ回った半円上の点を P(x, y)P(x, \ y) とします。

三角比の拡張された定義

sinθ=yr\sin\theta = \dfrac{y}{r}cosθ=xr\cos\theta = \dfrac{x}{r}tanθ=yx\tan\theta = \dfrac{y}{x}(x0x \ne 0)

0θ1800^\circ \le \theta \le 180^\circ の範囲では y0y \ge 0 なので、sinθ\sin\theta は常に 00 以上。一方、θ\theta が鈍角のとき x<0x < 0 なので、cosθ\cos\thetatanθ\tan\theta は負になります。

鈍角の三角比は、180θ180^\circ - \theta の公式で鋭角の三角比に直せます。たとえば

sin120=sin60=32,cos120=cos60=12\sin 120^\circ = \sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}, \quad \cos 120^\circ = -\cos 60^\circ = -\frac{1}{2}

のように、「sin\sin はそのまま、cos\costan\tan はマイナスがつく」と覚えましょう。

相互関係と変換公式

【相互関係】

sin2θ+cos2θ=1\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1tanθ=sinθcosθ\tan\theta = \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}1+tan2θ=1cos2θ1 + \tan^2\theta = \dfrac{1}{\cos^2\theta}

90θ90^\circ - \theta の公式】

sin(90θ)=cosθ\sin(90^\circ - \theta) = \cos\thetacos(90θ)=sinθ\cos(90^\circ - \theta) = \sin\thetatan(90θ)=1tanθ\tan(90^\circ - \theta) = \dfrac{1}{\tan\theta}

180θ180^\circ - \theta の公式】

sin(180θ)=sinθ\sin(180^\circ - \theta) = \sin\thetacos(180θ)=cosθ\cos(180^\circ - \theta) = -\cos\thetatan(180θ)=tanθ\tan(180^\circ - \theta) = -\tan\theta

例題 2(相互関係)

90<θ<18090^\circ < \theta < 180^\circtanθ=2\tan\theta = -2 のとき、cosθ\cos\thetasinθ\sin\theta の値を求めよ。

解き方

tan\tan から cos\cos を求めるときは 1+tan2θ=1cos2θ1 + \tan^2\theta = \dfrac{1}{\cos^2\theta} を使います。

1cos2θ=1+(2)2=5\frac{1}{\cos^2\theta} = 1 + (-2)^2 = 5

よって cos2θ=15\cos^2\theta = \dfrac{1}{5}θ\theta は鈍角で cosθ<0\cos\theta < 0 だから

cosθ=15=55\cos\theta = -\frac{1}{\sqrt{5}} = -\frac{\sqrt{5}}{5}

次に tanθ=sinθcosθ\tan\theta = \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta} より sinθ=tanθcosθ\sin\theta = \tan\theta \cos\theta なので

sinθ=(2)×(55)=255\sin\theta = (-2) \times \left(-\frac{\sqrt{5}}{5}\right) = \frac{2\sqrt{5}}{5}

拡張された三角比では「符号の確認」が命です。角の範囲から sin\sincos\cos の符号を先に決めてから計算しましょう。

正弦定理と余弦定理

ここからは直角三角形に限らず、一般の三角形の辺と角の関係を調べます。三角形 ABCABC で、頂点 AABBCC の対辺の長さをそれぞれ aabbcc と表すのが約束です。主役となる定理は2つ、正弦定理と余弦定理です。

正弦定理

三角形 ABCABC の外接円の半径を RR とすると

asinA=bsinB=csinC=2R\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R

「辺と、その対角の sin\sin の比は一定で、外接円の直径に等しい」という定理です。2つの角と1辺が分かっているとき、外接円の半径がからむときに使います。

余弦定理

a2=b2+c22bccosAa^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A
b2=c2+a22cacosB,c2=a2+b22abcosCb^2 = c^2 + a^2 - 2ca\cos B, \quad c^2 = a^2 + b^2 - 2ab\cos C

三平方の定理に補正項 2bccosA-2bc\cos A がついた形です。2辺とその間の角から残りの辺を求めるとき、3辺から角を求めるときに使います。角を求めるときは

cosA=b2+c2a22bc\cos A = \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}

の形が便利です。

例題 3(正弦定理)

三角形 ABCABC において、A=45A = 45^\circB=60B = 60^\circa=2a = \sqrt{2} のとき、bb を求めよ。

解き方

2つの角と1辺が分かっているので正弦定理を使います。

asinA=bsinB\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B}

に値を代入して

2sin45=bsin60\frac{\sqrt{2}}{\sin 45^\circ} = \frac{b}{\sin 60^\circ}

sin45=22\sin 45^\circ = \dfrac{\sqrt{2}}{2}sin60=32\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2} だから

b=222×32=2×32=3b = \frac{\sqrt{2}}{\dfrac{\sqrt{2}}{2}} \times \frac{\sqrt{3}}{2} = 2 \times \frac{\sqrt{3}}{2} = \sqrt{3}

例題 4(余弦定理)

三角形 ABCABC において、a=5a = 5b=7b = 7c=8c = 8 のとき、BB を求めよ。

解き方

3辺が分かっているので余弦定理で角を求めます。

cosB=c2+a2b22ca=64+25492×8×5=4080=12\cos B = \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca} = \frac{64 + 25 - 49}{2 \times 8 \times 5} = \frac{40}{80} = \frac{1}{2}

0<B<1800^\circ < B < 180^\circ だから

B=60B = 60^\circ

「求めたい角の対辺だけを引き算する」のがポイントです。分子の符号が正なら鋭角、負なら鈍角、と計算の途中で角の種類まで分かります。

どちらの定理を使うか迷ったら、「分かっている情報」で判断します。角の情報が多い(2角1辺、外接円)なら正弦定理、辺の情報が多い(2辺夾角、3辺)なら余弦定理、が目安です。

図形の計量(面積・内接円・空間図形)

三角形の面積は「底辺 × 高さ ÷ 2」で求めますが、高さの代わりに角度が分かっているときは、sin\sin を使って高さを表すことができます。2辺 bbcc とその間の角 AA が分かれば、高さは csinAc\sin A となるからです。

三角形の面積

三角形 ABCABC の面積 SS

S=12bcsinA=12casinB=12absinCS = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2}ca\sin B = \frac{1}{2}ab\sin C

「2辺とその間の角の sin\sin」の積の半分です。

内接円の半径

三角形 ABCABC の内接円の半径を rr とすると、面積 SS について

S=12r(a+b+c)S = \frac{1}{2}r(a + b + c)

内接円の中心と各頂点を結んで三角形を3つに分けると、それぞれの高さが rr になることから導けます。面積と3辺が分かれば rr が求められます。

例題 5(面積)

三角形 ABCABC において、b=4b = 4c=5c = 5A=30A = 30^\circ のとき、面積 SS を求めよ。

解き方

2辺とその間の角が分かっているので、面積の公式が直接使えます。

S=12bcsinA=12×4×5×sin30=12×4×5×12=5S = \frac{1}{2}bc\sin A = \frac{1}{2} \times 4 \times 5 \times \sin 30^\circ = \frac{1}{2} \times 4 \times 5 \times \frac{1}{2} = 5

「間の角」であることの確認を忘れずに。間の角でない場合は、先に余弦定理などで情報を整理してから使います。

三角比は空間図形にも応用できます。コツは、空間のまま考えず、「直角三角形や、余弦定理が使える三角形を含む平面を取り出す」ことです。立体の高さは、頂点から底面に下ろした垂線を1辺とする直角三角形で捉えます。

例題 6(空間図形)

1辺の長さが 22 の正四面体 ABCDABCD の高さ(頂点 AA から底面 BCDBCD に下ろした垂線の長さ)を求めよ。

解き方

頂点 AA から底面に下ろした垂線の足 HH は、正三角形 BCDBCD の外心(重心)に一致します。まず BHBH の長さを求めます。正三角形 BCDBCD の外接円の半径が BHBH なので、正弦定理より

BH=CD2sin60=22×32=23=233BH = \frac{CD}{2\sin 60^\circ} = \frac{2}{2 \times \dfrac{\sqrt{3}}{2}} = \frac{2}{\sqrt{3}} = \frac{2\sqrt{3}}{3}

直角三角形 ABHABH で三平方の定理を使うと

AH2=AB2BH2=443=83AH^2 = AB^2 - BH^2 = 4 - \frac{4}{3} = \frac{8}{3}

AH>0AH > 0 だから

AH=83=223=263AH = \sqrt{\frac{8}{3}} = \frac{2\sqrt{2}}{\sqrt{3}} = \frac{2\sqrt{6}}{3}

「垂線の足がどこに来るか」を確定させてから、平面の三角形を取り出すのが空間図形の定石です。

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