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数学II1

式と証明

二項定理、分数式、恒等式、等式・不等式の証明を学びます。

3次式の展開・因数分解と二項定理

数学Iでは2次式の展開・因数分解を学びました。数学IIでは、まず3次式に世界を広げます。3乗の公式は微分・積分や高次方程式でも繰り返し使うので、確実に身につけましょう。

3次式の展開・因数分解の公式

(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3(a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3

(ab)3=a33a2b+3ab2b3(a-b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3

a3+b3=(a+b)(a2ab+b2)a^3 + b^3 = (a+b)(a^2 - ab + b^2)

a3b3=(ab)(a2+ab+b2)a^3 - b^3 = (a-b)(a^2 + ab + b^2)

例題 1(3次式の展開と因数分解)

(x2)3(x-2)^3 を展開せよ。また、8x3+278x^3 + 27 を因数分解せよ。

解き方

(ab)3(a-b)^3 の公式で a=xa=xb=2b=2 とすると

(x2)3=x33x22+3x2223=x36x2+12x8(x-2)^3 = x^3 - 3 \cdot x^2 \cdot 2 + 3 \cdot x \cdot 2^2 - 2^3 = x^3 - 6x^2 + 12x - 8

8x3=(2x)38x^3 = (2x)^327=3327 = 3^3 なので、a3+b3a^3+b^3 の公式で a=2xa=2xb=3b=3 とすると

8x3+27=(2x+3){(2x)22x3+32}=(2x+3)(4x26x+9)8x^3 + 27 = (2x+3)\{(2x)^2 - 2x \cdot 3 + 3^2\} = (2x+3)(4x^2 - 6x + 9)

a3+b3a^3+b^3 の因数分解では、後ろの2次式の真ん中の符号がマイナスになる(ab-ab)ことに注意しましょう。

では (a+b)4(a+b)^4(a+b)5(a+b)^5、… と累乗の指数が大きくなったらどうなるでしょうか。展開したときの係数を並べると、次のような三角形(パスカルの三角形)が現れます。

111121133114641\begin{array}{ccccccccc} & & & & 1 & & & & \\ & & & 1 & & 1 & & & \\ & & 1 & & 2 & & 1 & & \\ & 1 & & 3 & & 3 & & 1 & \\ 1 & & 4 & & 6 & & 4 & & 1 \end{array}

両端は 11 で、内側の数は左上と右上の数の和になっています。この係数は組合せの記号を使うと (nr)\binom{n}{r} すなわち nCr\,{}_n \mathrm{C}_r で表せて、次の二項定理が成り立ちます。

二項定理

(a+b)n=nC0an+nC1an1b+nC2an2b2++nCnbn(a+b)^n = {}_n \mathrm{C}_0 a^n + {}_n \mathrm{C}_1 a^{n-1}b + {}_n \mathrm{C}_2 a^{n-2}b^2 + \cdots + {}_n \mathrm{C}_n b^n

展開式の一般項(第 r+1r+1 項)は

nCranrbr\,{}_n \mathrm{C}_r \, a^{n-r} b^r

bbrr 個選ぶ選び方が nCr\,{}_n \mathrm{C}_r 通りある」と考えると、係数の意味がよくわかります。

例題 2(展開式の係数)

(x+2)6(x+2)^6 の展開式における x4x^4 の係数を求めよ。

解き方

一般項は

6Crx6r2r\,{}_6 \mathrm{C}_r \, x^{6-r} \cdot 2^r

x4x^4 の項になるのは 6r=46-r = 4、すなわち r=2r = 2 のときです。よって係数は

6C222=15×4=60\,{}_6 \mathrm{C}_2 \cdot 2^2 = 15 \times 4 = 60

展開式の係数を求めるときは、全部展開する必要はありません。一般項を書いて、指数の条件から rr を決めるのが定石です。

整式の除法と分数式

整数の割り算「17÷5=317 \div 5 = 3 あまり 22」は 17=5×3+217 = 5 \times 3 + 2 と書けました。整式でも同じことができます。整式 AA を整式 BB で割ったときの商を QQ、余りを RR とすると

A=BQ+RA = BQ + R

が成り立ちます(ただし RR の次数は BB の次数より低い)。余り RR の次数が割る式 BB の次数より低くなるまで割り進めるのがルールです。計算は、降べきの順に整理して筆算で行います。抜けている次数の項は係数 00 として場所を空けておくとミスが減ります。

例題 3(整式の除法)

2x33x2+42x^3 - 3x^2 + 4x22x+3x^2 - 2x + 3 で割ったときの商と余りを求めよ。

解き方

2x33x2+0x+42x^3 - 3x^2 + 0 \cdot x + 4xx の項を補って筆算します。

まず 2x3÷x2=2x2x^3 \div x^2 = 2x なので、商の最初の項は 2x2x

2x33x2+42x(x22x+3)=x26x+42x^3 - 3x^2 + 4 - 2x(x^2 - 2x + 3) = x^2 - 6x + 4

次に x2÷x2=1x^2 \div x^2 = 1 なので、商の次の項は 11

x26x+41(x22x+3)=4x+1x^2 - 6x + 4 - 1 \cdot (x^2 - 2x + 3) = -4x + 1

余り 4x+1-4x+1 は1次で、割る式(2次)より次数が低いのでここで終了。

2x+12x + 1、余り 4x+1-4x + 1

検算: (x22x+3)(2x+1)+(4x+1)=2x33x2+4(x^2-2x+3)(2x+1) + (-4x+1) = 2x^3 - 3x^2 + 4 となり、元の式に一致します。

次に分数式です。x+1x22\dfrac{x+1}{x^2-2} のように、分母に文字を含む式を分数式といいます。分数式の計算ルールは、数の分数とまったく同じです。

分数式の計算

約分: 分母・分子を因数分解して、共通因数で割る

乗法・除法: AB×CD=ACBD\dfrac{A}{B} \times \dfrac{C}{D} = \dfrac{AC}{BD}AB÷CD=AB×DC\dfrac{A}{B} \div \dfrac{C}{D} = \dfrac{A}{B} \times \dfrac{D}{C}

加法・減法: 分母を因数分解してから通分し、分子を計算する

計算結果は、それ以上約分できない形(既約分数式)まで整理して答えます。

例題 4(分数式の乗法)

x2+2xx21×x+1x+2\dfrac{x^2+2x}{x^2-1} \times \dfrac{x+1}{x+2} を計算せよ。

解き方

分母・分子をそれぞれ因数分解してから掛けます。

x2+2xx21×x+1x+2=x(x+2)(x+1)(x1)×x+1x+2\frac{x^2+2x}{x^2-1} \times \frac{x+1}{x+2} = \frac{x(x+2)}{(x+1)(x-1)} \times \frac{x+1}{x+2}

x+2x+2x+1x+1 が約分できて

=xx1= \frac{x}{x-1}

分数式の掛け算は「先に展開」ではなく「先に因数分解」。約分のチャンスを最大限つくってから計算するのがコツです。

恒等式

x21=(x+1)(x1)x^2 - 1 = (x+1)(x-1) は、xx にどんな値を代入しても成り立ちます。このように、含まれる文字にどんな値を代入しても成り立つ等式を恒等式といいます。一方、x21=0x^2 - 1 = 0 のように特定の値(x=±1x = \pm 1)のときだけ成り立つ等式は方程式です。「すべての xx で成り立つ」のか「ある xx で成り立つ」のか、この違いをはっきり意識しましょう。

恒等式の性質(係数比較の原理)

ax2+bx+c=ax2+bx+cax^2 + bx + c = a'x^2 + b'x + c'xx についての恒等式であるための条件は

a=a,b=b,c=ca = a', \quad b = b', \quad c = c'

特に ax2+bx+c=0ax^2 + bx + c = 0 が恒等式     a=b=c=0\iff a = b = c = 0

つまり、両辺を整理して同じ次数の項の係数どうしを比較すればよいのです。

恒等式の係数を決定する方法は2つあります。

1. 係数比較法: 両辺を展開・整理して、各次数の係数を比較する
2. 数値代入法: 都合のよい値(x=0,1,1x=0, 1, -1 など)をいくつか代入して連立方程式を作る

数値代入法を使ったときは注意が1つ。代入した値で成り立つことしか確認していないので、厳密には「求めた値のとき、確かに恒等式になる」ことを確かめる(または、nn 次式なら異なる n+1n+1 個の値で成り立てば恒等式である、という事実を使う)必要があります。

例題 5(恒等式の係数決定)

等式 a(x1)+b(x2)=xa(x-1) + b(x-2) = xxx についての恒等式となるように、定数 aabb の値を定めよ。

解き方

【係数比較法】左辺を整理すると

(a+b)x(a+2b)=x(a+b)x - (a+2b) = x

両辺の係数を比較して

a+b=1,a+2b=0a + b = 1, \quad a + 2b = 0

2式の差から b=1b = -1、よって a=2a = 2

【数値代入法】x=1x = 1 を代入すると b=1-b = 1 より b=1b = -1x=2x = 2 を代入すると a=2a = 2。逆にこのとき左辺は 2(x1)(x2)=x2(x-1)-(x-2) = x となり、確かに恒等式になります。

答え: a=2a = 2b=1b = -1

どちらの方法でも同じ答えになります。代入する値は「カッコの中が 00 になる値」を選ぶと計算が一気に楽になります。

等式・不等式の証明

等式 A=BA = B を証明するには、次のいずれかの方針をとります。

1. 一方の辺(AA)を変形して、他方(BB)を導く
2. 両辺をそれぞれ変形して、同じ式になることを示す
3. ABA - B を計算して 00 になることを示す

a+b=1a + b = 1 のとき」のような条件付きの等式では、条件を使って文字を消去する(たとえば b=1ab = 1 - a を代入する)のが基本です。比例式 ab=cd\dfrac{a}{b} = \dfrac{c}{d} が条件のときは、ab=cd=k\dfrac{a}{b} = \dfrac{c}{d} = k とおいて a=bka = bkc=dkc = dk と表すのが定石です。

例題 6(等式の証明)

等式 (a2+b2)(x2+y2)=(ax+by)2+(aybx)2(a^2+b^2)(x^2+y^2) = (ax+by)^2 + (ay-bx)^2 を証明せよ。

解き方

両辺をそれぞれ展開して比べます。

左辺:
$(a2+b2)(x2+y2)=a2x2+a2y2+b2x2+b2y2(a^2+b^2)(x^2+y^2) = a^2x^2 + a^2y^2 + b^2x^2 + b^2y^2$

右辺:
$(ax+by)2+(aybx)2=(a2x2+2abxy+b2y2)+(a2y22abxy+b2x2)(ax+by)^2 + (ay-bx)^2 = (a^2x^2 + 2abxy + b^2y^2) + (a^2y^2 - 2abxy + b^2x^2)$

=a2x2+a2y2+b2x2+b2y2= a^2x^2 + a^2y^2 + b^2x^2 + b^2y^2

よって左辺と右辺は等しいので、等式は証明されました。+2abxy+2abxy2abxy-2abxy が打ち消し合うのがこの等式のポイントです。

不等式 ABA \ge B の証明は、AB0A - B \ge 0 を示すのが基本方針です。そのとき最大の武器になるのが、「どんな実数 xx でも x20x^2 \ge 0」という性質です。ABA - B を平方完成などで「2乗の和」の形に変形できれば、00 以上であることが示せます。等号がいつ成り立つか(等号成立条件)まで述べるのを忘れないようにしましょう。また、両辺が 00 以上のときは、A2B20A^2 - B^2 \ge 0 を示して ABA \ge B を結論する「2乗の比較」も有効です。

相加平均と相乗平均の関係

a>0a > 0b>0b > 0 のとき

a+b2ab\frac{a+b}{2} \ge \sqrt{ab}

等号が成り立つのは a=ba = b のとき。

証明は a+b2ab=(ab)220\dfrac{a+b}{2} - \sqrt{ab} = \dfrac{(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2}{2} \ge 0 から。a+b2aba + b \ge 2\sqrt{ab} の形で使うことが多く、「積 abab が一定になる2つの正の数の和」の最小値を求めるときに威力を発揮します。

例題 7(相加平均・相乗平均)

x>0x > 0 のとき、x+4x4x + \dfrac{4}{x} \ge 4 が成り立つことを証明せよ。また、等号が成り立つのはどんなときか。

解き方

x>0x > 0 より 4x>0\dfrac{4}{x} > 0 なので、相加平均と相乗平均の関係が使えます。

x+4x2x4x=24=4x + \frac{4}{x} \ge 2\sqrt{x \cdot \frac{4}{x}} = 2\sqrt{4} = 4

等号が成り立つのは x=4xx = \dfrac{4}{x}、すなわち x2=4x^2 = 4 のとき。x>0x > 0 より x=2x = 2 のときです。

相加・相乗平均を使うときは、(1) 両方の数が正であることの確認、(2) 掛けたときに文字が消える(定数になる)こと、(3) 等号成立条件、の3点セットを必ずチェックしましょう。

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