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数学C1

ベクトル

平面・空間ベクトルの演算、内積、位置ベクトルと図形への応用を学びます。

ベクトルの基本

「東へ 3 km」のように、大きさだけでなく向きも持つ量をベクトルといい、a\vec{a}AB\overrightarrow{AB} のように表します。AB\overrightarrow{AB} は点 A から点 B へ向かう矢印で、その長さ(大きさ)を AB|\overrightarrow{AB}| と書きます。向きと大きさが両方等しいベクトルは、位置が違っても「等しい」とみなします。ここがベクトルの大事な約束です。

ベクトルの加法・減法・実数倍

加法: AB+BC=AC\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC} = \overrightarrow{AC}(矢印をつなぐ)

減法: AB=OBOA\overrightarrow{AB} = \overrightarrow{OB} - \overrightarrow{OA}(終点 − 始点)

実数倍: kak\vec{a} は、k>0k>0 なら同じ向きに kk 倍、k<0k<0 なら逆向きに k|k|

逆ベクトル: BA=AB\overrightarrow{BA} = -\overrightarrow{AB}、零ベクトル: a+(a)=0\vec{a}+(-\vec{a}) = \vec{0}

座標平面では、ベクトルを成分で表せます。a=(a1, a2)\vec{a} = (a_1,\ a_2) は「xx 方向に a1a_1yy 方向に a2a_2 進む」ことを意味し、計算がぐっと楽になります。

成分による計算

a=(a1, a2)\vec{a} = (a_1,\ a_2)b=(b1, b2)\vec{b} = (b_1,\ b_2) のとき

a+b=(a1+b1, a2+b2)\vec{a} + \vec{b} = (a_1+b_1,\ a_2+b_2)ka=(ka1, ka2)k\vec{a} = (ka_1,\ ka_2)

a=a12+a22|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2}

A(a1, a2)\mathrm{A}(a_1,\ a_2)B(b1, b2)\mathrm{B}(b_1,\ b_2) に対して AB=(b1a1, b2a2)\overrightarrow{AB} = (b_1 - a_1,\ b_2 - a_2)(終点 − 始点)

例題 1(成分計算と平行条件)

a=(2, 1)\vec{a} = (2,\ 1)b=(1, 3)\vec{b} = (-1,\ 3) のとき、2ab2\vec{a} - \vec{b} とその大きさを求めよ。また、c=(4, 2)\vec{c} = (4,\ 2)a\vec{a} と平行かどうか調べよ。

解き方

成分ごとに計算します。

2ab=(4, 2)(1, 3)=(5, 1)2\vec{a} - \vec{b} = (4,\ 2) - (-1,\ 3) = (5,\ -1)
2ab=52+(1)2=26|2\vec{a} - \vec{b}| = \sqrt{5^2 + (-1)^2} = \sqrt{26}

平行条件は「c=ka\vec{c} = k\vec{a} となる実数 kk がある」ことです。c=(4, 2)=2(2, 1)=2a\vec{c} = (4,\ 2) = 2(2,\ 1) = 2\vec{a} なので、c\vec{c}a\vec{a} と平行です。

平行条件は成分でも表せます。a=(a1, a2)\vec{a} = (a_1,\ a_2)b=(b1, b2)\vec{b} = (b_1,\ b_2)(ともに 0\vec{0} でない)が平行であるための条件は

a1b2a2b1=0a_1 b_2 - a_2 b_1 = 0

です。「たすき掛けして引くと 00」と覚えておくと、kk を持ち出さずに判定できます。

ベクトルの内積

2つのベクトルの「なす角」の情報を取り出すために、内積という演算を定義します。内積の結果はベクトルではなく実数(数)になることに注意してください。

内積の定義と成分表示

a\vec{a}b\vec{b} のなす角を θ\theta(0θ1800^\circ \le \theta \le 180^\circ)とするとき

ab=abcosθ\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}|\,|\vec{b}| \cos\theta

成分では、a=(a1, a2)\vec{a} = (a_1,\ a_2)b=(b1, b2)\vec{b} = (b_1,\ b_2) のとき

ab=a1b1+a2b2\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2

定義式を cosθ\cos\theta について解けば、なす角が求められます。

cosθ=abab=a1b1+a2b2a12+a22b12+b22\cos\theta = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}|\,|\vec{b}|} = \frac{a_1 b_1 + a_2 b_2}{\sqrt{a_1^2+a_2^2}\,\sqrt{b_1^2+b_2^2}}

内積が正なら θ\theta は鋭角、負なら鈍角、00 なら直角です。符号を見るだけで角の種類がわかるのが内積の便利なところです。

垂直条件と内積の性質

a0\vec{a} \ne \vec{0}b0\vec{b} \ne \vec{0} のとき

ab    ab=0\vec{a} \perp \vec{b} \iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0

また、次の性質が成り立ちます。

aa=a2\vec{a} \cdot \vec{a} = |\vec{a}|^2ab=ba\vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{b} \cdot \vec{a}(a+b)c=ac+bc(\vec{a}+\vec{b}) \cdot \vec{c} = \vec{a} \cdot \vec{c} + \vec{b} \cdot \vec{c}

例題 2(なす角)

a=(1, 3)\vec{a} = (1,\ 3)b=(2, 1)\vec{b} = (2,\ 1) のなす角 θ\theta を求めよ。

解き方

まず内積と大きさを計算します。

ab=1×2+3×1=5\vec{a} \cdot \vec{b} = 1 \times 2 + 3 \times 1 = 5
a=1+9=10,b=4+1=5|\vec{a}| = \sqrt{1+9} = \sqrt{10}, \quad |\vec{b}| = \sqrt{4+1} = \sqrt{5}

よって

cosθ=510×5=550=552=12\cos\theta = \frac{5}{\sqrt{10} \times \sqrt{5}} = \frac{5}{\sqrt{50}} = \frac{5}{5\sqrt{2}} = \frac{1}{\sqrt{2}}

0θ1800^\circ \le \theta \le 180^\circ の範囲でこれを満たすのは θ=45\theta = 45^\circ です。

内積の性質を使うと、a+b|\vec{a}+\vec{b}| のような「和の大きさ」も扱えます。大きさはいったん2乗して

a+b2=(a+b)(a+b)=a2+2ab+b2|\vec{a}+\vec{b}|^2 = (\vec{a}+\vec{b}) \cdot (\vec{a}+\vec{b}) = |\vec{a}|^2 + 2\vec{a} \cdot \vec{b} + |\vec{b}|^2

と展開するのが定石です。文字式の (a+b)2(a+b)^2 の展開とそっくりですが、真ん中の項が内積になっている点だけが違います。

位置ベクトル

基準となる点 O を1つ決めると、平面上の点 A の位置は OA=a\overrightarrow{OA} = \vec{a} というベクトルで指定できます。この a\vec{a} を点 A の位置ベクトルといい、「A(a)\mathrm{A}(\vec{a})」と書きます。点を「O からの矢印」で表すことで、図形の問題を計算で処理できるようになります。

内分点・外分点の位置ベクトル

A(a)\mathrm{A}(\vec{a})B(b)\mathrm{B}(\vec{b}) に対して、線分 AB を m:nm:n に内分する点 P、外分する点 Q の位置ベクトルは

p=na+mbm+n,q=na+mbmn\vec{p} = \frac{n\vec{a} + m\vec{b}}{m+n}, \qquad \vec{q} = \frac{-n\vec{a} + m\vec{b}}{m-n}

特に中点は a+b2\dfrac{\vec{a}+\vec{b}}{2}ABC\triangle \mathrm{ABC} の重心 G は

g=a+b+c3\vec{g} = \frac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3}

内分点の公式は「分子で a\vec{a}b\vec{b} の係数がたすき掛けの位置(a\vec{a} に遠い方の nnb\vec{b} に近い方の mm)になる」と覚えます。m:n=1:1m:n = 1:1 を代入すると中点の公式になることを確認しておくと、覚え間違いに気づけます。

例題 3(内分点と重心)

A(a)\mathrm{A}(\vec{a})B(b)\mathrm{B}(\vec{b})C(c)\mathrm{C}(\vec{c}) を頂点とする ABC\triangle \mathrm{ABC} で、辺 BC を 2:12:1 に内分する点を D とする。AD\overrightarrow{AD}a\vec{a}b\vec{b}c\vec{c} で表せ。

解き方

D は BC を 2:12:1 に内分するので、内分点の公式より

d=1b+2c2+1=b+2c3\vec{d} = \frac{1 \cdot \vec{b} + 2\vec{c}}{2+1} = \frac{\vec{b} + 2\vec{c}}{3}

AD\overrightarrow{AD} は「終点 − 始点」なので

AD=da=b+2c3a=3a+b+2c3\overrightarrow{AD} = \vec{d} - \vec{a} = \frac{\vec{b} + 2\vec{c}}{3} - \vec{a} = \frac{-3\vec{a} + \vec{b} + 2\vec{c}}{3}

3点が一直線上にある条件

異なる3点 A、B、C が一直線上にあるための条件は、

AC=kAB\overrightarrow{AC} = k\,\overrightarrow{AB}

となる実数 kk が存在することです。「A から見た2本のベクトルが平行(実数倍)」と言い換えるのがポイントです。

ベクトルの図形への応用

2直線の交点の位置ベクトルを求める問題は、ベクトルの応用で最も重要なテーマです。カギになるのが「1次独立」という考え方です。

1次独立と係数比較

a0\vec{a} \ne \vec{0}b0\vec{b} \ne \vec{0} で、a\vec{a}b\vec{b} が平行でないとき(a\vec{a}b\vec{b} は1次独立)、平面上のどんなベクトルも sa+tbs\vec{a} + t\vec{b} の形にただ1通りに表せます。したがって

sa+tb=sa+tb    s=s, t=ts\vec{a} + t\vec{b} = s'\vec{a} + t'\vec{b} \iff s = s',\ t = t'

つまり、両辺の係数を比較してよいということです。

例題 4(交点の位置ベクトル)

OAB\triangle \mathrm{OAB} において、辺 OA を 2:12:1 に内分する点を C、辺 OB の中点を D とし、線分 AD と線分 BC の交点を P とする。OA=a\overrightarrow{OA} = \vec{a}OB=b\overrightarrow{OB} = \vec{b} として、OP\overrightarrow{OP}a\vec{a}b\vec{b} で表せ。

解き方

OC=23a\overrightarrow{OC} = \dfrac{2}{3}\vec{a}OD=12b\overrightarrow{OD} = \dfrac{1}{2}\vec{b} です。

P は線分 AD 上にあるので、AP:PD=s:(1s)\mathrm{AP}:\mathrm{PD} = s:(1-s) とおくと

OP=(1s)a+s12b\overrightarrow{OP} = (1-s)\vec{a} + s \cdot \frac{1}{2}\vec{b}

P は線分 BC 上にもあるので、BP:PC=t:(1t)\mathrm{BP}:\mathrm{PC} = t:(1-t) とおくと

OP=(1t)b+t23a=2t3a+(1t)b\overrightarrow{OP} = (1-t)\vec{b} + t \cdot \frac{2}{3}\vec{a} = \frac{2t}{3}\vec{a} + (1-t)\vec{b}

a\vec{a}b\vec{b} は1次独立なので係数を比較して

1s=2t3,s2=1t1-s = \frac{2t}{3}, \qquad \frac{s}{2} = 1-t

第2式から s=22ts = 2 - 2t。第1式に代入すると

1(22t)=2t32t1=2t34t3=1t=341 - (2-2t) = \frac{2t}{3} \quad \Longrightarrow \quad 2t - 1 = \frac{2t}{3} \quad \Longrightarrow \quad \frac{4t}{3} = 1 \quad \Longrightarrow \quad t = \frac{3}{4}

よって s=232=12s = 2 - \dfrac{3}{2} = \dfrac{1}{2} となり

OP=12a+14b\overrightarrow{OP} = \frac{1}{2}\vec{a} + \frac{1}{4}\vec{b}

直線 AB 上の点(係数の和が 1)

点 P が直線 AB 上にある

    OP=sOA+tOB,s+t=1\iff \overrightarrow{OP} = s\,\overrightarrow{OA} + t\,\overrightarrow{OB}, \quad s + t = 1

さらに s0s \ge 0t0t \ge 0 を加えると、P は線分 AB 上の点になります。「係数の和が 11」は交点問題の別解としても強力です。

たとえば例題 4 は、OP=ka+lb\overrightarrow{OP} = k\vec{a} + l\vec{b} とおき、「P が直線 AD 上     \iff a\vec{a}OD=12b\overrightarrow{OD} = \dfrac{1}{2}\vec{b} で表したときの係数の和が 11、すなわち k+2l=1k + 2l = 1」のように2つの式を立てても解けます。どちらの方法も使えるようにしておきましょう。

空間ベクトル

空間のベクトルは、成分が3つになるだけで、平面とほとんど同じルールで計算できます。zz 成分が増えても、加法・実数倍・内積の考え方はそのまま通用します。

空間ベクトルの成分計算

a=(a1, a2, a3)\vec{a} = (a_1,\ a_2,\ a_3)b=(b1, b2, b3)\vec{b} = (b_1,\ b_2,\ b_3) のとき

a+b=(a1+b1, a2+b2, a3+b3)\vec{a} + \vec{b} = (a_1+b_1,\ a_2+b_2,\ a_3+b_3)ka=(ka1, ka2, ka3)k\vec{a} = (ka_1,\ ka_2,\ ka_3)

a=a12+a22+a32|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2 + a_3^2}
ab=a1b1+a2b2+a3b3\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2 + a_3 b_3

なす角・垂直条件(ab=0\vec{a} \cdot \vec{b} = 0)も平面と同じ式で求められます。

例題 5(空間ベクトルの内積)

a=(1, 2, 2)\vec{a} = (1,\ -2,\ 2)b=(2, 2, 1)\vec{b} = (2,\ 2,\ 1) について、a|\vec{a}|ab\vec{a} \cdot \vec{b} を求め、ab\vec{a} \perp \vec{b} かどうか調べよ。

解き方

大きさは

a=12+(2)2+22=9=3|\vec{a}| = \sqrt{1^2 + (-2)^2 + 2^2} = \sqrt{9} = 3

内積は

ab=1×2+(2)×2+2×1=24+2=0\vec{a} \cdot \vec{b} = 1 \times 2 + (-2) \times 2 + 2 \times 1 = 2 - 4 + 2 = 0

内積が 00 で、どちらも 0\vec{0} ではないので、ab\vec{a} \perp \vec{b} です。

同一平面上にある条件

一直線上にない3点 A、B、C の定める平面上に点 P があるための条件は、

AP=sAB+tAC\overrightarrow{AP} = s\,\overrightarrow{AB} + t\,\overrightarrow{AC}

となる実数 sstt が存在することです。位置ベクトルで書くと、OP=rOA+sOB+tOC\overrightarrow{OP} = r\,\overrightarrow{OA} + s\,\overrightarrow{OB} + t\,\overrightarrow{OC} かつ r+s+t=1r+s+t = 1 とも表せます。直線のときの「係数の和が 11」の空間版です。

空間では、1次独立なベクトルが3本(a\vec{a}b\vec{b}c\vec{c} が同一平面上にない)必要で、空間のどんなベクトルも sa+tb+ucs\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c} の形にただ1通りに表せます。平面のときの係数比較が、空間では3つの係数の比較になるだけです。

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