全数調査と標本調査
みなさんはテレビ番組の「視聴率」を聞いたことがありますか。視聴率は、日本中のすべての家庭を調べているわけではなく、一部の家庭だけを調べて、そこから全体のようすを推測しています。このように、何かを調べるときには「全部を調べる方法」と「一部だけを調べる方法」の2つがあります。
なぜ全数調査をしないで標本調査をするのでしょうか。理由は大きく2つあります。1つ目は、対象の数が非常に多いと、全部を調べるのに時間や費用がかかりすぎるからです。2つ目は、調べること自体で対象がこわれてしまう場合があるからです。たとえば電池の寿命を調べる検査では、調べた電池は使い切ってしまうので、全部を検査したら売る電池がなくなってしまいます。
標本調査で大切なのは、標本が母集団の「縮図」になっていることです。そのためには、かたよりなく、母集団のどの部分も同じ確率で選ばれるように標本を取り出す必要があります。このような取り出し方を無作為に抽出するといいます。
標本調査の方法
標本を無作為に抽出するには、人の「なんとなく」の判断に頼ってはいけません。人が自由に選ぶと、無意識のうちにかたよりが生まれてしまうからです。そこで、偶然だけで選ばれるしくみを使います。
標本の大きさについても考えてみましょう。袋の中に白と黒の碁石がたくさん入っているとき、5個だけ取り出して調べるのと、50個取り出して調べるのとでは、どちらが袋全体のようすをよく表しているでしょうか。取り出す数が少ないと、たまたま黒ばかり出るようなことが起こりやすくなります。
標本調査の利用
標本を無作為に抽出すれば、標本での割合は母集団での割合とほぼ等しいと考えられます。この性質を使うと、母集団の中の数量を推定できます。
次は、母集団の総数そのものを推定する方法です。池の魚のように全部を数えられないものは、「印をつけて返し、あとでもう一度つかまえる」という方法で総数を推定できます。
標本平均を使った推定もできます。たとえば、みかん農園の1500個のみかんから無作為に15個取り出して重さを量ったら、平均が g だったとします。標本平均は母集団の平均に近いと考えられるので、みかん全体の重さの合計は
より、およそ g、つまりおよそ kg と推定できます。個数が多くて全部量れないものでも、一部の平均から全体を見積もれるのが標本平均の便利なところです。
標本調査の活用と注意点
標本調査の結果が信頼できるのは、標本が無作為に抽出されているときだけです。標本にかたよりがあると、どんなに標本の大きさを大きくしても、正しい推定はできません。
たとえば、駅前で平日の昼間にアンケートをとると、その時間に駅前を通れる人(通勤しない人など)にかたよります。インターネットの投票は「答えたい人だけが答える」ので、意見の強い人にかたよります。標本調査の結果を見るときは、「その標本はどうやって選ばれたのか」を確かめる習慣をつけましょう。標本調査は、正しく使えば少ない手間で全体のようすをつかめる、とても強力な方法です。