三平方の定理
直角三角形には、3つの辺の長さの間にいつでも成り立つ、とても美しい関係があります。それが「三平方の定理」(ピタゴラスの定理)です。直角三角形で、直角に向かい合ういちばん長い辺を斜辺といいます。この章では、この定理を使って、いろいろな図形の長さを計算できるようになりましょう。
なぜこの定理が成り立つのか、面積を使った証明の考え方を紹介します。直角をはさむ2辺が 、、斜辺が の直角三角形を4枚用意し、1辺が の大きな正方形の四隅にすき間なく並べます。すると、真ん中に1辺が の正方形ができます。
大きな正方形の面積を2通りに表すと
左辺を展開すると 、右辺は です。両辺から を引くと
が得られます。「同じ面積を2通りに表して比べる」という発想がポイントです。
注意してほしいのは、 にあたるのは必ず「斜辺」だということです。斜辺は直角の向かい側にある、3辺の中でいちばん長い辺です。「どの辺が斜辺か」を最初に確認してから式を立てる習慣をつけましょう。また、辺の長さは正の数なので、 のような式から を求めるときは、正の平方根だけを答えにします。
三平方の定理の逆と特別な直角三角形
三平方の定理は「直角三角形ならば 」という定理でした。実は、この逆も成り立ちます。つまり、3辺の長さを調べるだけで、その三角形が直角三角形かどうかを判定できるのです。
次に、角度に特徴のある2種類の直角三角形を見てみましょう。三角定規の形をした「、、 の直角二等辺三角形」と「、、 の直角三角形」です。この2つは、3辺の比が決まっているので、1辺の長さが分かれば残りの辺がすぐに求められます。
平面図形への利用
三平方の定理が本当に活躍するのはここからです。図形の中に直角三角形を見つける(または垂線を引いて自分で作る)ことで、いろいろな長さが計算できます。まずは、長方形や正方形の対角線、正三角形の高さです。
円でも三平方の定理は大活躍します。ポイントは次の2つの性質で、どちらも図の中に直角三角形を作ってくれます。
1つ目は「円の中心から弦に引いた垂線は、その弦を2等分する」こと。中心 O、弦 AB、垂線の足を H とすると、直角三角形 OAH ができて、(半径)、(中心から弦までの距離)、(弦の半分)の間に三平方の定理が使えます。
2つ目は「円の接線は、接点を通る半径に垂直である」こと。円外の点 P から接線を引き、接点を A とすると、 なので直角三角形 OAP ができます。
最後に、座標平面上の2点間の距離です。2点を結ぶ線分を斜辺として、 軸に平行な辺と 軸に平行な辺をもつ直角三角形を作れば、三平方の定理で距離が求められます。
空間図形への利用
三平方の定理は空間図形でも使えます。コツは「空間の中から平面の直角三角形を切り出す」ことです。代表例が直方体の対角線です。縦 、横 、高さ の直方体で、まず底面の対角線を求め、次にその対角線と高さでできる直角三角形にもう一度三平方の定理を使います。
底面の対角線の2乗は です。直方体の対角線を とすると
となり、次の公式が得られます。
角錐や円錐では、「高さ」を三平方の定理で求めてから体積を計算する問題が定番です。正四角錐なら、頂点から底面に下ろした垂線の足は底面の正方形の対角線の交点(中心)に一致します。円錐なら、母線・底面の半径・高さの3つで直角三角形ができます。
体積の公式は、角錐も円錐も「底面積 高さ 」でしたね。
立体の表面にそって糸をかけるときの「最短の長さ」を求める問題もよく出ます。立体のままでは考えにくいですが、糸が通る面を展開図に広げると、最短の糸はまっすぐな線分になります。あとは展開図の上で直角三角形を作り、三平方の定理で長さを求めるだけです。「立体の表面上の最短距離は展開図で直線」と覚えておきましょう。